改善提案名人に挑戦! | どうしたら易しく面白くなるか もっと楽にならないか |
第2話 ナクス作戦 | 改善提案名人に挑戦!《目次》 | ||||||||
イントロダクション | |||||||||
第1話 チリツモ作戦 | |||||||||
[1]少しずつ中身を濃くして | 第2話 ナクス作戦 | ||||||||
[1]少しずつ中身を濃くして | |||||||||
[2]なくしちまえ! | |||||||||
[3]それ本当に必要なの? | |||||||||
[4]なぜ?と本当?にゃかなわない | |||||||||
改善提案は質より量。不満を黙っていないで問題提起しよう。そして、自分ならこうする、という意見を必ず書こう。内容はお粗末で下らなくても、ピントが外れていても、読みにくくてもいいから、とにかく提案してみよう。 心配しなくても良い。多分・・・ボツになって返ってくるから。 それでも、1回や2回でメゲないでみんなでしつこくしつこく提案しよう。その内、上司や事務局もきみの意見に耳を傾けずにはいられなくなる。 ボツになって返ってきた提案は捨てないでとっておこう。それは、きっとQCサークル活動の良いテーマになるはずだ。 上杉君のラインはこうして「事務局泣かせ」のラインと呼ばれるようになった。なにしろメンバー6人とも半分悪乗りして各自が週に3件出す。つまり、月に100件近いペースで提案されるのだ。ただし、採用されたのは1割にも満たなかったけど・・・ QC大会から半年たったある日、上杉君は提案事務局の織田課長に呼び止められた。 「申し訳ないが上杉君。なんというか0.1秒のワンパターンはもう勘弁してくれないか。きみのところの提案が多いのはいいんだが、その処理に追われて自分の仕事がまったくできない。今日も残業だよ」 「はぁ、まだまだネタはたっぷりあるのですが・・・ダメでしょうか」 「いや、0.1秒がいけない訳では決してないんだ。そのおかげで現にきみのラインは非常に整理・整頓が行き届いているし、とても結構なことだとは思うんだけどね。ただ、もう少しその、なんというか問題点を良く煮詰めた提案が出てこないかなぁと思うんだ」 「そうは言っても、0.1秒と言う気楽な改善だからみんな出してくれるんで、ちょっと難しいことを頼むと、また前のように出なくなります」 「わかってる。わかってるんだが、どうだろう、そろそろ提案用紙にも慣れてきたことだし、少しずつその、なんというか改善のテクニックを勉強すると いうのは」 「しかし、脳ミソを使うと言うのはボクも含めてみんな苦手ですからねぇ・・・」 「いや、とりあえずは難しいことをやれって言うのではないのだよ。つまりその、なんというか効果的な改善のコツというのかな」 勉強と言うのにはどうも抵抗がある。はっきり言ってやりたくないのだが・・・ |
[5]初心に帰って | ||||||||
[6]プラスとマイナスはゼロ | |||||||||
第3話 ナガラ作戦 | |||||||||
第4話 トリカエ作戦 | |||||||||
第5話 ヤサシク作戦 | |||||||||
《おもしろがりホームページ》 | |||||||||
おすすめの 出し物 |
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[2]なくしちまえ! | |||||||||
せっかく、順調に提案件数が伸びてきているのに、改善テクニックなんて面倒臭そうなことを言ったら、また元通りのなにも言わないラインになってしまう。あんまり上杉君は乗り気ではない。 そんな気持ちを無視して織田課長はしゃべりつづける。一体、課長の残業仕事はどうしちゃったんだろう? 「なんでもかんでも0.1秒ではなくてだね、こんなふうに考えると、なんというか効果的な改善につながる。そのポイントが4つあるんだよ」 いい加減にしてくれないかなぁ。ボクももう帰りたいんだけど。 「その第一番目がナクスということなんだ」 なぁんだ、そんなこと当たり前じゃないか。つまらないこと言うなぁ。 「普段当たり前と思っていることをもう一度見直してごらん。実はなんの意味もなく、以前から行われていたから引き続きやっているということが結構多いんだ。そのことに対して、なんというか意外にみんな疑問を感じてないんだね。作業だけでなく、物でも同じ。今使っている作業台や工具が本当に必要なのかどうか」 「・・・あのう、課長、残業の方はいいんですか?」 「えっ?」 と時計に目をやる織田課長。 「ホイ、もうこんな時間か。いやぁ悪いなぁ、ホントに申し訳ない。この話の続きはまたにしてくれないか。ホントにごめん。とにかく、ナクスっていうところに気を付けてみてくれないか」 ようやく、解放された上杉君。玄関のところにいた営業所の近松君と一緒に駐車場に向かって歩きだした。 途中、古い小屋があって、その脇を迂回しなければならない。 「ジャマくさ、このボロ小屋。一体何に使っているんや?」 「ああ、以前は開発課の実験室だったのが、今は不要品の物置になっているらしいよ」 「ほんまに必要なもんは置いてないんとちゃうか?」 「さあ。でもあまり人が出入りしているところは見たことないね」 「なんで放ったらかしにしてあるんやろ?なくすこと、考えへんのかいな・・・」 「・・・・・・!」 まてよ、ナクスか。これは単純だけれど、改善提案のネタにも使えそうだぞ。 |
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[3]それ本当に必要なの? | |||||||||
ナクス作戦は、口で言うのは簡単だが、これが意外に奥深い。しかし、やればかなりの効果が期待できる。その攻め方を研究してみよう。 いつものように上杉君、仕上げ工程の一員として作業している。このラインでは、品物をて送りするために各作業場所の間に代が設置されている。たとえば、前工程の北条さんが作業を終えると品物をその台の上に置き、上杉君はその品物を取って作業するといった具合だ。 さて、今日は手がかかる特殊品が流れていて、標準品と比べると一人一人の作業時間もバラついているみたいだ。 こんなとき標準品と同じように自分のペースで製品を流してしまうと、後工程が追い着かなくなって仕掛品がだんだんたまってくる。 「北条さん、もうちょいペースを落としてくれない?」 「あら、ごめんなさーい」 とは言うものの、なかなか台の上の仕掛品はなくならない。 どうしたら良いのだろう?もちろん、ライン全体の作業のバランスが取れていれば問題はないのだけれど・・・。このままだと、台はただの仕掛品置き場になっている。 そもそもこの台はなんのためにあるのだろう・・・? この台は仕掛品を置くためにあるのか?そんなばかな。それでは、作業ペースを調節するためにあるのか?それならこんなに大きな台でなくても良いはずだ。 ただ工程のつなぎに使っているのでは?だとすれば、それぞれの作業場所をもっと近づけて、作業後品物を直接次の作業台に置いても良いじゃないか。そうすれば、こんな台なんていらないぞ。 ピンポーン!正解正解。 台をなくすことによって、ラインもコンパクトになって人の移動距離も減り、となりが遅れているときは手伝えるようにもなるし、置き場所がないから余計な仕掛品は作らなくなる。 「改善のネタ、めーっけ」 という上杉君の声に北条さんは目をパチクリ。 ナクスときの最初の着眼点は、このようにその目的をはっきりさせることだ。 同じようにして、普段そこにあるのが当たり前と思っているものについて、なぜそれが必要なのか、その目的は何なのかをみんなで話し合ってみよう。 |
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[4]「なぜ?」と「ほんと?」にゃかなわない | |||||||||
さて、上杉君のラインに、高校を卒業して入社したばかりの黒田さんという女の子がいる。配属されて間もないので、もっぱら一年先輩の竹中さんにくっついて仕事を教えてもらっている。今日も外観検査のやり方を教わったところだ。 「クロちゃん、空のPTボックス持ってきてちょうだい」 「センパーイ、PTボックスってなんですかぁ?」 そばにある現物を指さして、 「ああ、こういうプラスチック製の箱のことよ」 「センパーイ、なぜPTボックスって言うんですかねぇ」 「みんながそう呼んでいるからよ。よくわからないわ」 ・・・クロちゃん、納得のいかない表情。 「どこにあるんですかぁ」 「えーっと、どこかに空いているのがあるはずよ。探してきて、お願い」 「はーい」 しばらくして、空箱を持ったクロちゃんが戻ってきた。 「センパーイ、なぜ空箱をまとめておかないんですかねぇ」 「使いっ放しなのよね、みんな。さ、この品物を箱に入れてちょうだい」 作業台の上の仕掛品を箱に詰めだした。 「センパーイ、なぜ箱を使ったら片付けないんですかねぇ」 「・・・きっと、場所が空いてないのね」 「ほんとにぃ?あちこち空いている場所ありますよぉ」 「うーん、場所が決められてないからよ、きっと」 「なぜ決めないんですかねぇ」 「別に決めておかなくても仕事に差し支えないからよ」 「ほんとですかぁ?だって、空箱を探すの、結構時間かかりますよぉ」 「慣れれば速くなるわよ」 「でも、決めておいた方がスッキリするし、探す手間も省けてもっと速くなりますよぉ」 「うー、よくわからない」 ・・・またしてもクロちゃん、納得のいかない表情。 「・・・センパーイ、なぜ箱に入れるんですかぁ?」 「箱の中に入れておけば、1回で仕上げラインのところに持っていけるから楽でしょ?」 「ほぉんとですかぁ?でも、これ全部入り切らないから、もう一度残りを取りに戻らなくちゃならないですよぉ、面倒だと思うけどなぁ。 「・・・ねぇセンパーイ」 「もーいやっ」 竹中さんは、クロちゃんが苦手である。 |
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[5]初心に帰って | |||||||||
竹中さんはこのところノイローゼ気味。なにしろ、仕事を教えるたびに「なぜ?」と「ほんと?」の質問攻めなのだ。 でも、クロちゃんは竹中さんを困らせようとして質問しているわけでは決してないんです。 早くみんなと同じように一人前になろうと一生懸命なんです。だから、わからないことやおかしいなと感じたことは、なんでも聞いているんだな。 しかしついに、竹中さんは耐え切れなくなってリーダーの上杉君のところに相談にきた。 「わたし、もうガマンできません。こんな調子では、きちんと仕事ができません」 「うーん・・・いや、実はボクもあの子の『なぜ・ほんと』には参っていたんだ、ただ・・・」 上杉君、ちょっと間をあけたあとは説得口調だ。表情だけは一人前のリーダーになってきたぞ。 「竹中さんも一年前のことを思い出してほしいんだ。右も左もわからないままラインに配属されて、きっと困ったんじゃない?」 「もちろん困りました。困りましたけど、質問して先輩の仕事に文句を言うなんて失礼です。私はクロちゃんみたいに仕事のじゃまになるほどの質問なんてしませんでしたよ。先輩の動きをまねしながら自然に仕事を覚えていったんです」 「ボクもそうだったんだ。なぜだろうと思ったことでも黙って先輩の言う通りにやっていたんだ。そして仕事に慣れるにつれてそう思うことも少なくなってきた。でも、それは問題がホントになくなったからかなぁ」 「・・・・・・」 「だって、黒田さんの『なぜ・ほんと』はかなり痛いところを突いてくるだろう?僕らが気が付かない問題がやっぱりあるんだよ。いや、ほんとは気が付いているのに無意識に忘れよう、無視しようとしているんだ。だから、竹中さんも黒田さんの質問をむげにしないで、一緒になって考えてみたらどうだろうか」 しかし、竹中さんは不満顔。 「そんなこと言ったって・・・・・・そんなこと絶対ムリです。そんなことしてたら製品を作れなくなってしまいます」 「・・・・・・ははは、そ、そうなんだよなぁ。いちいち黒田さんに付き合っていたら、時間がいくらあっても足りないからなぁ。そこが困ったところなんだよなぁ・・・わかった、彼女には質問もほどほどにしなさいと言っておくよ」 あー、あっさり引き下がっちゃった。まだまだ上杉君はわかっていないようだ。 |
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[6]プラスとマイナスはゼロ | |||||||||
「・・・というわけで、少しは黙って仕事してね」 「はーい」 と、クロちゃんもあっさり引き下がったようですが・・・ 「あのう、上杉さん、1つだけいいですかぁ」 「うん、いいよ」 「なぜ、PTボックスに物を入れるんですかぁ?」 「そりゃ、物をまとめて運べるし、保管する場合はそのまま置いておけるからさ」 「ほーんとにぃ?物を運ぶときには不便ですよぉ」 「え、なんで?」 いかん!またクロちゃんのペースにはまってしまった。 「だって、1箱に入り切らないときは何回も行ったり来たりするしぃ、数が少ないときはPTボックスなんて使わなくてもいいしぃ、それから・・・」 「いいんだよ、2箱以上になるときはパレットで運べば良いし、少なければ手で持っていっても構わないんだ。必ずPTボックスを使わなくちゃいけないというルールはないんだ」 「やったぁ!それじゃPTボックスなんてなくしちゃいましょうよ」 「えっ、ええ?」 これは意表を突いた発言だ。 「だからぁ、検査と仕上げの場所を近づければ、いちいちPTボックスに入れたり出したりすること、いらないですぅ」 「・・・そ、そうだよな・・・前に作業台をなくす改善をしたとき、なんで気が付かなかったんだろ・・・・・」 そう、ナクス作戦はいろいろなところに応用できる定石みたいなものである。1つの改善で満足せずにどんどん広げていこう。 定石その1 まず目的をはっきりさせること。仕事の中で使っている物や自分の行動が本当になくてはならないものなのかどうか確認すること。そのとき、しつこく「なぜ」と「ほんと」をくり返すのがコツだ。たとえば、なぜその動作が必要か、なぜその作業台が必要か、なぜその伝票が必要か等々。 定石その2 プラスとマイナスを探すこと。これは、仕事の中で「わざわざ」やっていることを探すことだ。たとえば、わざわざ箱に入れて出している、わざわざ並べて崩している、わざわざ転記して記入している、わざわざ往復している等々。 定石その3 現状にこだわらないこと。今やっていることの中には、目的不明なのにルール化されているように見えることが意外に多い。初心に帰って、当たり前と思っていることに疑問を投げかけてみよう。この際、先輩なんていうプライドなんか捨てて、ずぶの素人の意見を聞いてみるのも良い。先入観のない彼らの方がものの本質が見えているものなのだ。 |
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