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1.信頼性の意味

 FMEAFailure Mode and Effect Analysis の頭文字で、日本語では「故障モードと影響解析」と呼ばれます。製品の信頼性設計を行う際に用いられる手法です。設計技術者にとっては必須の手法です。

 この信頼性Reliability)という言葉。みなさん、おわかりですか?
 信頼できる物、人、情報・・・そんな言い方を日常会話でもしますから、なにか信用できるようなことと曖昧に考えている人が少なくありません。品質が良ければお客様から信頼されるので品質と同義語と思っている人もいます。でも、それなら信頼性設計なんて言わずに、品質設計と言えば良いですよね。



 信頼性には右のような4つの性質があります。
 信頼性設計とは、この4つの性質について最適なスペックを実現させることです。
 信頼性が高ければムダな損失が抑えられますから、信頼性とは品質の基になる性質だと言うことができるでしょう。

 新技術が実用化されたり、新製品が商品化されて市場に出る場合には、信頼性が十分に確保されていなければなりません。特に、コストが高く、やり直しがきかない大型のプロジェクトでは、ちょっとしたトラブルが大きな損害につながります。
 FMEAはこうした背景の下に開発された手法の一つです。 
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2.FMEAの考え方

 FMEAは、信頼性を検討しようとする対象について、それを構成する部分にどんなトラブルが起こり得るか、もしそれが起きたら全体にどんな影響を及ぼすかを予測して、それらの予防策を検討します。



 上のような考え方で、見落としのないようにFMEA表にまとめます。
 この表をきれいに作ることが目的と勘違いしないこと。FMEAは、予測されるトラブルに然るべき対策を施して、信頼性を確保するために行います。なので、一度作って飾っておいてはいけません。
 ・故障モード、推定原因、故障の影響について、新たに気付いたことはないか?
 ・重要度は今のままで良いか?
 ・重要度が高いのに、現在の対策は甘くないか?
 ・重要度が低いのに、対策にコストを掛け過ぎていないか?
等々、必要に応じて見直しをしていかなければ、FMEAをやる意味がありません。このことは十分に心得ておくこと。

 また、参考書やセミナーなどでは、FMEAには「製品のFMEA」と「工程のFMEA」があるという言い方がされることがあります。製品と生産工程とは見た目が違うせいで、それぞれ異なるFMEAがあると誤解している人がいますが、考え方は全く同じです。それは、対象をシステムとして捉えるからです。
 システムとして捉えれば、製品や生産工程だけでなく、プラントやプロジェクト、ソフトウェア、管理システム、集団組織など、あらゆるものが検討の対象となり得ます。
 システムとは何か?については、別のコンテンツを参照してください。


3.FMEAの進め方

(1)システム機能の確認
 信頼性を検討する対象をシステムとして捉えるため、まずその機能を明確にします。
 機能とは、システムの目的・役割・任務のことです。故障とは、この機能が異常または停止していることです。

(2)システムレベルの決定
 システムの機能を展開すると、右のようなシステムレベルのツリーを描くことができます。
 FMEAは必ずしもシステム全体を解析する必要はありません。例えば、マイナーチェンジの設計の場合は、変更箇所のサブシステムを検討対象として解析します。



(3)機能ブロックの決定
 上のようなシステムレベルのツリーが描ければ、構成部分が明らかになります。このとき、作表の際に構成部分の並びがバラバラにならないよう、個々の機能の相互関係を明らかにしておくのがベターです。
 そこで、組立図面や工程分析などを参考にして、機能ブロックを決定します。
 下は、FMEAの説明でよく使われる懐中電灯の例です。反射鏡・電球・プラグという並びで1つの機能ブロックになります。


(4)信頼性ブロック図を作成する
 機能ブロックにまとめた構成部分は、ツリーのような枝分かれではなく、横並びで表現します。
 この図を作るのが苦手という人もいますが、この図が最終目的ではないので、あまり深刻に悩む必要はありません。あくまで解析する構成部分を明確にするのが目的ですから、しっかりシステムとして捉えていれば大丈夫です。

(5)故障モードを列挙する
 故障モードのモード(mode)とは、実態の現れ方とか様態といった意味です。
 FMEA表を作る前に、過去のトラブル記録や試験結果を参考にして、機能ブロックごとに予測される故障モードを列挙します。列挙した故障モードは整理して、検討する必要があるものを選定します。

(6)推定原因を列挙する
 選定された故障モードについて、重要と思われる推定原因を列挙します。このとき、FTAFault Tree Analysis:故障の木解析)や特性要因図を利用します。(これらについては、改善ぷちセミナー「なぜなぜなぜなぜなぜ」を参照)
 このプロセスは一人では大変なので、数人で協力して行います。

(7)FMEA表を作成する
 FMEA表の様式は任意ですが、aAブロック名(構成部分名)、機能(目的)、故障モード、推定原因、システムへの影響、故障等級(重要度)などは必須項目です。Excelを利用して作表するなら(5)〜(6)で作成した故障モードのリストに他の項目を付け加えていけば簡単でしょう。
 故障等級を決めて、優先度の高い故障モードから、防止対策を検討します。対策案がまとまったら整理しておきます。



(8)デザインレビュー
 デザインレビュー(DR:Design Review)と横文字で言うと、何か特別なことをやるように聞こえますが、要するに設計(design)を検討(review)することです。みなさんの会社でも、新製品を立ち上げる場合に関係部署が集まってやっていますよね。
 このときに、FMEAの結果と対策案について検討するのです。対策が決定したら、実施計画を立てて実施します。


4.改善活動への活用

 FMEAはもともと信頼性設計の手法です。まず、設計段階で使いこなせるようにすること。
 改善活動の目的は問題を解決することですから、FMEAを「使うこと」を目的にして取り入れても、当事者が混乱するだけです。ただし、トラブルを予測して未然に防ぐという考え方は、改善の取組み姿勢として重要なので、参考にすると良いでしょう。

(1)生産保全における活用
 生産保全では、機械導入前にFMEAを実施し、その結果を保全予防、改良保全に反映させて、大きなトラブル(ドカ停)が起きないよう対策を行います。
 重要度の高い故障については、設計の見直しや、フェールセイフ(故障が起きても自動的に安全を確保する仕組み)を施します。
 また、必要な点検項目・保全項目を洗い出し、これを整理してメインテナンスの効率化を図ります。


(2)工程管理における活用
 工程管理を要領よく行うために、各工程の管理基準をまとめて、QC工程表を作成します。QC工程表は、ラインパトロールや品質監査を実施する時のチェックリストになります。
 生産工程のFMEAを行っておけば、不良モードや管理項目の見落としを防ぎ、QC工程表をまとめるベースとして活用できます。



5.信頼性後の補足

 FMEAは大きなトラブルの未然防止に威力を発揮しますが、その後はバラツキとの戦いになります。
 バラツキの原因をつかむのは簡単ではありません。そのコントロールができないと、工程が不安定となり、小さなトラブル(チョコ停)が頻繁に発生します。これがバカにできません。
 品質管理の最大の敵はバラツキと言われます。
 例えば、品質工学はその解決の有効な決め手となります。しかし、バラツキ以前の問題も解決できていない状態で、このような手法に飛び付いても効果は高が知れています。
 生産保全や工程管理でも、まずは、信頼性を確保することから始める必要があるのです。

(この項終わり)
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