コンセプトは ”どうしたら面白くなるか?” 庭先の博物誌 画・文:平澤 功
おもしろがりホーム
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 健康のため、毎朝、小1時間のブラブラ歩きを続けています。
 安物のデジカメを片手に、季節の移ろいを愉しんでいます。庭先や野っ原、街角などで心に残った風景をエッセーにしました。

   vol.7 2009.03
   vol.6 2009.02
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090415 あめあがりのまち
090414 きか
090413 まつりのおわり
090412 いもかたばみ

090410 だいこん
090409 ひけつ
090405 はなつめくさ

090404 どこもかしこも
090403 きぶし
090402 げんじとへいけ
090401 せっぺん

おすすめの出し物
  ※このコンテンツはブログの記事を再構成したものです。 品質でもうけなさい…品質「補償」活動・「お祭り」品質管理に決別を!品質問題の本質と解決の考え方を豊富なイラストでやさしく解説します。 改善提案名人に挑戦!…生産改善のコツを楽しい物語で解説。
備忘録めもらんだむ・・・常時工事中です。歯抜けでも差し支えなければどうぞご覧ください。 午後の絵本…オリジナルのイラストです。ヒマなときにどうぞ。
  
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雨上がりの街
 ああ、なんて気持ち良い朝なんだ! 今朝早起きして外に出た人はみんなそう思ったに違いない。
 爽やかな春風が頬をかすめて全身を包む。昨日までのカラカラに乾いた、少しばかり攻撃的な空気が嘘のように消えてなくなり、街の中はしっとりとした優しさに満ち溢れている。
 この感じは、そう、山小屋の朝の匂い、あるいは、夏山の樹林帯で嗅ぐ露の香りと同じだ。胸一杯に空気を吸い込まずにはいられない。
 見上げる空は山で見る青さ。その空の下、この朝を満喫しているのは新聞配達の若者、犬とそれを連れた散歩人、あとは小鳥たちだけだなんて、なんて勿体ないんだろう。布団の温もりより余程気持ち良いのに。勿体ない勿体ない。
 春が弱まり其処此処に夏が潜む候になるとこんな朝がある。1年に数えるほどしかない贅沢な朝だ。

(2009/04/15)
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帰化
 ケシの花である。正しくは、ナガミヒナゲシ(長実雛罌粟)という。
 帰化植物として知られる、ケシ科ケシ属の越年草。穏やかな地中海地方が原産で、アジア、南北アメリカ、北アフリカ、オセアニアと、ほぼ世界中の温暖な地域に分布している。ヒナケシと言えばアグネスチャンの歌でお馴染みだし、虞美人草、麗春花といった美しい別名がある。ポピーは園芸種の呼び名。ナガミヒナゲシは、果実が細長い形をしていることからこの名がついた。花言葉は癒し、慰安、脆き愛。ケシと言えば阿片を思い出すが、この花からは採れない。
 と、植物図鑑の説明は大体こんな感じだ。ちょっとした風にも倒れそうな可憐な花とまで評されれば、人気がある花の一つに数えられてしまうかもしれない。
 昔はこんな花見なかった。あちこちで目立つようになったのは、ごく最近のことである。それも、年を追って増えていく様子に違和感を持ってしまうのは私だけだろうか。
 確かに朱に近い赤が鮮やかである。園芸種のようにまとまって咲いているのはまだ良い。しかし、路傍に雑草と混じって花開いているのを見つけると、その赤が病的な熱を帯びて見え、何か異常な渇きのようなものを感じてしまう。
 外来生物の繁殖が問題となる昨今、果たしてこの花の場合はどうなのだろうか。今のところ、警鐘を鳴らすような報告はされていない。一人で勝手に感じているだけなのだが、妙に気になるのである。

(2009/04/14)
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祭りの終わり
 空気が乾いているから、少しばかり気温が高めに振れても気にならない。汗をかいても、風がすぐに蒸発熱を奪っていく。
 子供のはしゃぐ声も、弁当を囲んで談笑する声も、酔いに任せて盛り上がる宴も、今は梢を揺らす風の音。ときどき、遠くからスポーツをしている若者の声が聞こえる。あとは小鳥の囀りが響くくらい。
 祭りは終わり。気の抜けた寂しさに包まれるはずなのに、この静かな風の音には生命の鼓動のような力強さがある。秋祭りの後の雪の白さは眠りの時を告げるけれど、春の祭りが終わった後はピンクの彩りが活動の始まりを告げるのだ。そのところどころに見える明るい緑がこれからの主役、希望の色。
 夏が始まる。夏は生命が最も輝く季節。
 しかし、夏は大人、憎らしいほどの大人だ。決してあわてない、浮足立たない。暑さがじわーっと腰を下ろすまで、じっくりじっくり生命に潜熱を吹き込んでいく。その、先を見通したような落ち着きが、そこかしこに姿を現すのだ。
 子供のように群れていたシジュウカラが、今一羽となって力強く初夏を囀っている。
 夏の始まり。1年で一番好きな季節。

(2009/04/13)
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芋酢漿草
  トランプのマークのようなすっきりした三つ葉なので、ガキの頃はこれをクローバーと思い込んでいた。探してみると四つ葉のものもあって、ラッキー♪と喜んでいたものだ。
 小学校の理科の教科書にシロツメクサ、つまり本物のクローバーの写真を見つけたとき、葉っぱも花の形も違うので頭の中は大混乱。すると、あの三つ葉は一体何者なんだ?どうしても気になって図書室の図鑑で、カタバミという名前なのだと知った。さらに詳しく調べるようなら植物学者にもなれただろうが、子供の興味というのはせいぜいそこまで。クローバークローバーと口にする友達に、したり顔で正しい名前を教えていた・・・いやなガキだねぇ・・・。
 カタバミは夏の季語。どこにでもある雑草として扱われる。ここ2、3日25度を超す夏日が続いたせいか、明るい日に照らされて元気に花開いていた。側溝の隙間に根を下ろして、さすが雑草のど根性である。黄色い花が普通だが、このようなピンクのものは、花の中心が濃いのが芋カタバミ、そうでなければ紫カタバミ。
 カタバミの呼称は、片葉が3つあることから片葉三となった。調べてみると、昔はクローバーなんかより余程身近な草だったことがわかる。その典型が家紋。「片喰紋」と言って、日本の十大家紋の中に数えられており、武士には非常に人気のある紋だったらしい。
 シュウ酸を多く含み、大昔はこれで真鍮の鏡を磨いたことから鏡草とも呼んだ。虫さされの薬としても利用されたという。夜になると葉を閉じることから雀の袴という可愛らしい別名もある。オキザリスという学名も洒落ている。
 ただし、庭先ではあまり歓迎される草ではなく、芝生や花壇に生えると取り除くのにかなり苦労する。山菜の図鑑には油炒めで食べると美味いと載っていたが、シュウ酸が多いと聞くと腹を下しそうで食指が動かない。試したことはない。

 かたばみが咲く春道の照り返し

(2009/04/12)
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大根
 大根と言えば、八百屋の店先に並んでいるあの白い根菜しか思い浮かばないから、子供の頃は菜の花と同じ仲間だなんて信じられなかった。菜の花に似た白い花を見つけて、これが大根の花だと知ったときは、ちょっとした感動を覚えたものた。
 もちろん、観賞用の花ではないから、華やかさ鮮やかさは今一つではある。しかし、こうして春風に揺れる白い花をじっくり眺めてみると、なかなかどうして可愛らしい花ではないか。
 大根は日本人が最も好む野菜の一つだという。昔、祖父母の食卓には、必ず大根おろしが並んでいた。タカジアスターゼという消化酵素が体に良いから、毎食食べなきゃいかんと祖父が言っていた。そんなこと言われなくても、大根おろしに縮緬じゃこをまぶした奴は大好物なのだ。
 沢庵もうちで漬けていた。市販のやたら黄色くて甘ったるいのとは違って、白くて塩っぱくて固かった。祖父はそれをコワイコワイと言っていたので、何が怖いのかなと思ったら、固いことをコワい(強い)と言うのであった。
 そんなだから、青い葉もムダにはせず、菜飯や糠漬けにしたものだ。今どき、テレビの料理番組で大根葉の料理を珍しいと喜んでいるのを見て、何をバカなことを言ってるんだと思ったりする。
 花を咲かせるのは種を取るためと知ったのは、ずっと後のことだ。それまでは、どうやって食べるんだろうと疑問に思っていた。菜の花だって漬けものにして食べるし、大根の花も食べられるのではないか。今でもそんな興味を持って、この花を眺めてしまうのである。

 風に付く大根花の残る畝

(2009/0410)
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非潔
 変だ。
 いつも、この頃になると道路に沢山の花弁が舞い散り、若葉が祭りの終わりを告げて、街の中に落ち着きが戻ってくる。本当なら、一番好きな時季なのだが、今年の桜はまだ満開。花吹雪も見られない。花弁が散るというより、花がそのまま落ちてくる感じで、やっぱり、なんか変だ。
 未曾有の経済不況、社会保障の破綻、大地震、温暖化や異常気象、人心の荒廃、世の中心配なことばかり。そんな人事を花と関連付けるのはナンセンスな話だが、なにか心が定まらない。浮き浮きさせるかと思ったら、不安な気持にさせる。花は人の心を微妙に動かすのだ。
 桜が親しまれるのは、パッと咲いてパッと散るその潔さ。だから、昔の武士が好んだし、軍隊があった頃は同期の桜なんて歌が歌われた。その潔さがない。潔という字に不を付けたら意味が違うから、非の字を当ててみた。
 とは言うものの、今のエライ人を見ていたら、潔さがないのも事実のようだ。それを桜の花が揶揄しているのかもしれない。
 心配してもきりがない。そのくらいに考えておくことにしよう。

(2009/04/09)
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花爪草
 去年植えた苗がきれいなピンクの花を咲かせた。モスフロックスと呼ばれる北米原産の多年草で、花壇の縁取りなどに利用される。和名は花爪草。
 あれ?これ芝桜じゃないの?と、気付く人も少なくなかろう。その通り、これは芝桜。
 その名から、古くから親しまれてきたような印象があるが、芝桜としてポピュラーになったのはごく最近のことである。秩父の羊山公園が有名で、一面鮮やかなピンクや白に覆われた丘を見れば、芝桜と呼びたくなるのもわかるような気がする。
 ただし、テレビなどで紹介される見物客の多さに恐れをなして、まだ一度も訪れたことはない。いや、実は、今のような芝桜の丘が有名になる以前にサイクリングで一度行った記憶がある。その当時はこんな人工の公園より、その近くにそびえる武甲山に登る方が興味があった。
 最近、富士の本栖湖畔にも同様の芝桜の丘ができた。昨年訪れた際に苗を購入して、うちの庭に植えておいたもの。公園では手入れが大変だと言っていたので、根付くのは難しいのかなとも思っていたが、どっこい、植えただけの放ったらかしだった割には、雑草にもめげずに元気に花開いてくれた。
 もともと、乾燥と寒さに強いとされているから、手入れが大変というのは、要するに公園としてきれいに整備するのが大変という意味なのだろう。これなら、もう少し植込みを広げて、市松模様でも作ってみようかと思案中なのである。

(2009/04/05)
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どこもかしこも
 天気が良いので、桜をたどって、いつもの散歩より長い距離を歩いた。 

 うちの近くのグラウンドの入り口にある桜。 日当たりが良いせいかいつも早咲きで、例年だとすでに葉桜になっているのだが、今年はようやく満開になったところ。









 鷺沼の駅に出た。駅前の桜も今が満開だ。 ここから次のたまプラーザ駅までの線路沿いの道が、花のトンネル道になっていて、花見の人気スポットになっている。









 まだ交通量は少ないが、どの車もいつもより心持ち低速運転。











 こんな花のトンネルがずっと続くのである。












 あちこちカメラや携帯を構えて立ち止まる人が目立つ。 午後になると人も車ももっと増えてくる。











 たまプラーザの駅が近くなってきた。












 駅前の桜。 この通りから離れて、少し住宅地の方に入ってみよう。











 静かな住宅地にある児童公園の桜。 お年寄りとそれをサポートする女性の2人連れがゆっくり桜見物をしている。










 国学院大学のグラウンド脇に並ぶ桜。 この辺りの人がブルーシートを広げて、花見の準備をしている。 それをよそに、左の網の向こうでは野球部やサッカー部、陸上部の学生たちが練習に汗を流していた。








 通りを進み、高速道路をくぐってもこんなチェリーロードが続いている。











 ここは、いつも通るお馴染みの児童公園。ここでもお弁当を広げているグループが沢山いた。

 きりがないのでこれでおしまい。坂の多いコースを、3時間近くテレンコ歩いたので、脚が張って痛い。 







 桜にはかなわない。こんなに沢山一斉に咲き乱れれば、他の花がかすんでしまうのは当たり前。どこもかしこも白い花模様に包まれて、日本人ならずとも気分が高揚して抑えられなくなるだろう。桜についてくどくど語る必要もあるまい。

(2009/04/04)
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木五倍子
 もし、明治より前の人が、テレビの時代劇に出てくる歯の美しい女優を見たら、眉をひそめてインチキだと言うに違いない。現代では、歯の白さは健康美の象徴でもある。しかし、昔は黒い歯こそが女性の身だしなみであった。
 お歯黒の起源は古事記の時代にまでさかのぼる。その昔の酒造りは「口醸す酒」と言って、山ブドウや桃を口に含んで唾と一緒につぼにはいて発酵させた。そんなものを飲んでいたというとぞっとするけれども、今とは全く感性が違うのだ。
 山ブドウの色素が歯に染みついて黒くなったことから、黒い歯は働く女性の美の象徴となり、それが習慣となって、お歯黒を塗るようになったというわけだ。実際、お歯黒には虫歯予防効果があって、お歯黒を付けていた人の人骨は虫歯が少ない事実が確かめられている。
 まず、鉄くずを粥や茶などで煮詰めて鉄漿というドロドロの茶色い液を作る。これにフシ粉と呼ばれるタンニン酸の粉を混ぜて黒い染料になったものがお歯黒である。このフシ粉というのは、ヌルデという木の葉にできる虫えい(コブ)から作られる。この虫えいにタンニンが多く含まれていて、これを五倍子(フシ)と呼んだ。
 キブシは山野にごく普通に生えていて、庭木や公園樹に植えられる。この果実がヌルデの虫えいの代用品として用いられることから、この名前がついている。
 穂状の花序を垂らした姿が愉しいが、こんな地味な木に気を取られる人などほとんどいないだろう。それでも、調べ始めたら、こんなに色々な話が出てきた。別に知らなくても良いようなことばかりだが、それが文化の深さのように感じられて、歴史に思いを巡らすことができるのである。

(2009/04/03)
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源氏と平家
 源氏が白旗、平家が紅旗を掲げて合戦したのは今からたった800年前のことである。その故事から、二つの勢力が対抗する場合に紅白という色を使って表すようになった。
 その当時の戦いは、今のように非人間的な無差別殺戮ではなく、一種の儀式でもあり、貴族と武家の華やかさを映したものでもあった。したがって、戦いの色と言っても、それは平安の時代絵巻を象徴する色合いなのである。一方で、紅白は晴天を意味し、縁起の良い色の取り合わせとされる。
 そんな色合いの花が満開になっていれば、だれだって目を奪われるに決まっている。1本の木に見事な紅白の枝ぶりだ。ソメイヨシノに緋桜を接ぎ木すればこうなるだろうか?いや、ソメイヨシノは人の手がかかりすぎて弱いから難しいだろう。
 こんな話し方をすれば、時節柄この木を紅白の桜と思い込んでしまうかもしれない。しかし、桜にはこのように2色の花が咲く種類はない。これは接ぎ木してこうなっているのではなく、源平桃というれっきとした桃の種類である。
 見栄えの良さ、美しさを言うならば、ソメイヨシノよりこの源平桃の方が見事だと思う。それなのに、やはり桜満開の方が日本人好みなのは、単に見た目の美しさとは違うものがあるのだろう。あるいは、植えられている数も圧倒的で、それが一斉に散り風に舞う光景は、他と比較のしようがなく印象が強いのだろう。
 桜の下でにぎやかに酒盛りするより、こんな紅白の花を眺めながらコーヒーでも飲んで、日がな一日のんびりしているのも良いかなと思うのである。

(2009/04/02)
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雪片
 スノーフレーク、雪の薄片という名前が付いている。
 和名で大松雪草とあった。それをダイマツユキグサと読んだものだから、鬼の大松と呼ばれた、東京オリンピック女子バレーボールの監督を思い出してしまった。こんな可愛らしい花にずいぶんと豪快な名前を付けたもんだなと勝手に思っていたら、実はオオマツユキソウと読むのが正しいのであった。
 大きい松雪草というなら、小さい松雪草もある。こちらはスノードロップという名前で、ロシアの戯曲「森は生きている」に出てくる松雪草はこの花のようだ。小さい頃に叔母に連れられて児童向けの音楽劇を見た記憶があるが、女の子向けのお話だったせいか、ほとんど印象に残っていない。
 というわけで、この大松雪草はバレーボールともロシアの戯曲とも関係なく、余計な先入観を除いて眺めた方が良い。鈴蘭水仙という別名があるヒガンバナ科の花である。
 散歩の途中ところどころ庭先で咲いているのを見る。それほど華やかな花でもないので、道行く人の目に留まる風でもない。よほど暇な奴でなければこれと思って見ようとはしないのではないか。
 その暇な奴が近寄って眺めてみれば白い制服の女の子。6枚の花弁の先に小さな緑のアクセントがついたスカートがとても素敵なお嬢さんだった。

 雨空にスノーフレークの白眩し

(2009/04/01)
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